ネットの普及による紙媒体の衰退が叫ばれて久しい。事実一部報道では全国の自治体の約4分の1ですでに書店が消滅し、今後もその割合は増えると予想されている。知の源泉である図書を収集し、これまで市民に開放してきた図書館のあり方も変化している。単独図書館が減少しオフィスやイベントスペースを併設する複合図書館が増加。2003年の指定管理者制度導入によって、民間事業者による運営も増えてきた。これまでにない図書館運営のアイデアや、行政のコスト減などが期待される一方、司書らの待遇悪化や、重要な知のインフラを営利目的の企業に委ねることへの不安の声も聞こえる。変化の渦中にある図書館の意義と、その器としての建築のあり方について今あらためて考える
9月号特集「図書館の自由」より
巻頭鼎談
図書館の自由と図書館建築|永利和則×比嘉武彦×松隈 洋 4
図書館の歴史
公共図書館の軌跡を辿る|仲村拓真 8
指定管理者制度を考える
指定管理者制度と公立図書館|永利和則 12
公共図書館の原点
日野図書館とひまわり号|和久田幸佑 14
図書館建築をめぐる
〈神奈川県立図書館〉そだてる建築をめざして神奈川県立図書館の前川國男館|斎藤信吾 16
〈水戸西部図書館〉水戸西部図書館から見るこれまでとこれからの図書館建築|堀田隆斗 18
〈宮城県図書館〉検索と散策が混じる場所|菊地尊也 20
〈多摩美術大学図書館〉作品としての図書館からみる展望|葛谷寧鵬 22
アルヴァー・アアルトの図書館 見聞備忘録|水島 信 24
小説にみる図書館
静寂の中に秘められたイメージ|内山媛理 32
映画にみる図書館
映画『パブリック 図書館の奇跡』から再び考える|坂本 旬 30
コラム
文化船「ひまわり」が島に運んだもの|植田佳宏 28
誰でも楽しめる図書館のために|萬谷ひとみ 34
公設・私設の図書館経験から感じたそれぞれの「自由」|石井裕子 35
一箱本棚オーナー制度図書館「みんとしょ」のすすめ|宮﨑一徳 36