かつて伝説の建築家がいた。熱烈な支持者がいた。強力なカリスマ性で、神のように崇拝された。その名は白井晟一。ところが1983年に没すると、その熱はしだいに薄れ、白井晟一とは誰かを知らぬ人も増え、その建築がどこにあるのか、今も現存するかどうかも不確かになりつつある。白井晟一という存在は何だったのか。どんな時代背景がそれをもたらしたのか。白井建築は、今、どのように地域に受け入れられ、位置づけられているのか。白井晟一とその建築が現代に語りかけるもの、意味するものを考える。
8月号特集「白井晟一再発見」より
今も続く私の原点|小川信子 5
廃墟としての白井晟一論―磯崎新の《晟一好み》再考|木原天彦 6
時に堪える建築とは|白井原太 8
白井晟一と私|泉 幸甫 10
白井晟一の書と字と建築 地と紙に宿る縦と闇|種田元晴 12
見に行く
【長野・歓帰荘】ノアの方舟とバベルの塔 白井晟一とモダニズム建築の共鳴する地点|浅野言朗 15
【群馬・松井田町旧役場】ゲマイングート[共有財産]としての役場|石川恒夫 18
【長崎・親和銀行本店・懐霄館 親和銀行大波止支店】様式と時代を伝統拡大する在野の建築|水谷 元 21
【茨城・サン・セバスチャン館 サンタ・キアラ館】「縄文的なもの」への本質的な問いかけと挑戦|稲用隆一 24
【秋田・大館木材会館】白井が突き立てた柱が「秋田杉の里」見守る|武藤重典 27
【秋田・試作小住宅[顧空庵]】湯沢で受け継がれる小住宅|石渡雄士 30
【秋田・湯沢市の建築群】白井晟一秋田時代を振り返る|清水川 隆 32
父のこと 白井晟一とのかかわり|木曽善元 34
『無窓』を読む|伊藤隆一 36
白井晟一と時代背景 1950 年代を振り返る|羽藤広輔 38