関東のビルがそびえる都市部や、家々が密集する下町を歩いていると、見慣れた形の大小さまざまな築山をたびたび目にする。黒い火山岩で覆われ、1合目から頂上までの名所を石像で再現したその築山は、「富士塚」と呼ばれるミニチュアの富士山だ。山開きの日には登攀することもできる。都市空間の中で異彩をはなつこの不思議な構造物は、その実、地域の歴史や土地の地形と密接に結びついている。都市空間とのギャップ、塚が内包する物語が街に奥行きを持たせている。
7月号特集「都市と富士塚」より
巻頭文
富士塚とは何か│中嶋信彰 12
地域の富士塚
江東区の3つの富士塚│根岸博之 15
富士塚と都市
〈高田富士塚〉移転させられた最初の富士塚│今野慶信 18
〈コラム〉 絵馬から再現された見沼富士 21
〈目黒富士塚〉目黒にあった二つの富士塚と新富士遺跡で発見の胎内洞穴│横山昭一 22
〈田子山富士塚〉登れる文化財 地域のシンボルとしての富士塚│深瀬 克 26
〈インタビュー〉市長に聞く 志木市民会館・市民体育館再整備 富士塚からの眺望改善を設計要件に 28
〈富士見坂〉冨士山と都市景観│三舩康道 30
〈コラム〉歌舞伎町・鬼王神社の富士塚 44
練馬区立美術舘建て替えプロジェクト「21世紀の富士塚」
新しい意味の世界へ│平田晃久 32
コミュニティの核として
草加市瀬崎の冨士行・富士塚│今井規雄 36
文化財としての富士塚
「木曽呂の富士塚」修理と保全│宇田哲雄 39
提案
武州七富士めぐり│原 信夫 42