マンション(区分所有権型分譲多層耐火集合住宅)とは不思議なものだ。たった50年で日本の人口の1割(推定1500万人)、都市生活者の3割近くが住むまでになったが、普及の速度に従って制度の方が追いかけるという様相を呈している。マンションの難しさは二つある。一つは一般の人にとって財産の柱である住居を50人や100人で共同管理しているという点だ。全員の利害がかかわる中で、この最小の共同体は民主主義の実験場となっている。もう一つは、マンションを購入する際、賞味期限が明示されていない点だ。どの段階で何をするべきか、取扱説明書もなしで、人は人生最大の買い物をしている。50年前は、マンションは永遠だと思われていたかもしれないが、どうもそうでもないことがわかってきた。今、課題が見え始めてきた分譲マンションについて、民主主義の切実で現実的な最小単位、「管理組合」から考えてみたい。
4月号特集「管理組合の研究」より
序論
マンションのはじまりと定義|松本真澄 3
管理組合理事長、元理事長座談会 住環境を共同で守り維持する難しさと面白さ|應田治彦、島 章、志村 仁、堀尾喜代、小田保彦 6
解説
区分所有法はどう変わるのか|竹田智志 12
海外比較
【概観】海外の区分所有法と管理組合|鎌野邦樹 16
【ドイツ】ドイツでは、土地と建物が一体、建替えという発想なし|藤巻 梓 18
【フランス】長期間の修繕、改良を重視。荒廃対策も進む|吉井啓子+寺尾 仁 20
【イギリス】伝統の長期賃借権。フラット保有者を守るには|大野 武 22
事例報告
理事長として建築家として自分たちで住環境を守ること|多羅尾直子 24
管理組合の課題と専門家集団の役割|小倉 浩 26
横浜市のマンション管理適正化の試み|磐村信哉 28
コラム
進む第三者管理方式 誰に任せ、どうチェックする?|金田ゆき 30
課題と提言
管理組合…現状、課題、提案|丸山英氣 32