このごろ「銭湯」という言葉を目にする機会が増えた。廃業した銭湯を、シェアオフィスやカフェ、ギャラリーとして再生活用する例も見かけるようになった。銭湯を守ろう! 残そう! というのは単なるノスタルジーではない。内風呂普及率が限りなく100%に近くなった今も、銭湯は地元民に支えられ生き続けている。実はどんな公共施設よりも、生きて使われている地域コミュニティのハブなのだ。地元の銭湯で湯に浸かり、人の気配を感じて、温まる至福。銭湯には人間が人間らしく生きるために必要なものがたくさん詰まっている。身近にありながら今まで目を向けられてこなかった銭湯をまちとのかかわりを軸に、その空間特性にも注目して再考する。
「銭湯のある風景」より
銭湯経営者座談会
まちがあって、人がいて|角屋文隆×栗田尚史×長谷川 護×大和慶子 3
事例紹介
【松本湯[東京都東中野]】 創業85年目の挑戦 三代目のこだわり銭湯+サウナ|鈴木孝昌 8
【燕湯[東京都上野御徒町]】 文化財銭湯は生きている|三舩康道 10
【大學湯[福岡市箱崎]】 廃業銭湯の建物再生・維持・再利用|石田 健 12
【神水公衆浴場[熊本市神水]】 被災した自宅の再建から銭湯開業へ|黒岩裕樹 14
【中乃湯[沖縄市安慶田]】 沖縄最後の銭湯|山口瞬太郎 16
銭湯の記憶
江戸東京銭湯物語 町と人と銭湯と|小林愛恵 18
銭湯雑話
なぜ今銭湯か 銭湯が持つ多様な価値とまちとのつながり|江口晋太朗×栗生はるか×サム・ホールデン×牧野 徹 18
コラム
銭湯の建築史と劇場的空間|米山 勇 28
僕が銭湯を継いだ理由|大久保勝仁 30
台湾における銭湯史 「湯の国民」による海外統治と銭湯|三文字昌也 33
銭湯とまちの関係性|栗生はるか 36
銭湯から見る、東京に隠された公共性と歴史|サム・ホールデン 39