HOME一覧前号


建築ジャーナル
2006
3月号
No.1101
定価:900円+税

特集

その保存、是か非か

 


 3月号特集編集担当/上田隆 表紙写真/今田修二

親しみ、愛情を持った建築がパワーシャベルで壊されるとき、人の心は傷つき、喪失感、また怒りを覚えるだろう。建築は長い年月を経るうちに、土地の歴史や人々の生活の記憶と結びついたものとなるからだ。それゆえ、建築の保存は、地域の文化や個々のアイデンティティーを守り伝える精神的行為といえる。一方でそれは非経済的な行為でもある。都市開発や高層ビルの建設といった経済的な行為の前に、保存を要望する声も空しく、建築は壊されていく。  近年、「建築保存」が市民権を得始めてはいる。しかし本当の建築保存とは何かを模索しているのが現状だ。今回の特集では、建築保存の実例を5つ挙げて、あえて「是非」を問う。判断基準は、「是」と「非」の間に横たわる悩み深き問題を提示し、よりよき建築保存を考える材料としたい。

「その保存、是か非か」より

  
01 問題提起
近代建築の「記憶」を未来へとつなぐために
松隈洋|京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科助教授
02 分析
一般論では解けないレプリカのディレンマ
鈴木博之|東京大学大学院工学系研究科教授
03-1 事例 保存に成功・改修中 国際文化会館
これからの「保存と再生」について良きテキストになってほしい
小林正美|明治大学理工学部建築学科教授・建築家
03-2 事例 レプリカの保存
東京銀行協会と日本工業倶楽部会館
東京丸の内のレプリカ建築も「反面教師」としての意義はあり
兼松紘一郎|DEOCOMOCO Japan幹事長・JIAアーカイブ委員会委員
03-3 事例 解体・部分的再現 表参道ヒルズ
「同潤会」は「同潤館」になり「残す」という意味を問いかける
内田青蔵|文化女子大学住環境学科教授
03-4 事例 フェイクな保存 旧第一勧業銀行京都支店
中川理|京都工芸繊維大学造形工学科教授
03-5 事例 解体・移転へ 広島市民球場
広島復興の象徴である「場の記憶」が消えつつある
錦織亮雄|広島市民球場の再生を考える協議会代表・新広島設計代表
04 論理と倫理
なぜ、建築家が建築保存にかかわるべきなのか
篠田義男|日本建築家協会関東甲信越支部保存問題委員会・篠田義男建築研究所代表
05 保存への情熱
生まれ育ったまちのかけがえのない建築だから、市民のパワーで守りたい
葛西ひろみ|前川國男の建築を大切にする会代表

東日本版
中部版
西日本版
九州版

[緊急インタビュー]
「建築士法改正で責任と権限ある建築家資格を」小倉善明 02

[INTERVIEW]
「水や空気のように私たちを守ってきた平和憲法を感じよう」土井ゆきこ 04

[論評]
「『小さな政府』の帰結〜障害者自立支援法をめぐって」斎藤まこと 06
「喜怒哀楽を宿す人間のまちを取り戻せ」鄭暎恵 07


[地域の話題]
東日本 町田市新庁舎設計QBS槙文彦氏を特定、守れ下北沢 ほか 08
中  部 「木附の里」の10年目、JIA東海支部耐震偽造事件で集会 ほか 12
西日本 「建築家職能」を学生に伝える ほか 16
九  州 長崎グループホーム火災から1か月、九産大「居住地計画」講評会 ほか 18

information 22
オススメABC 24

[安心安全住宅ニュース]
古川保のこんなものほしい10 
設計監理SOS
反電磁派講座3


[連載]

連載タイトル 連載number 内容
52 建築風土記 15 観光客の町から住民の町へ
日田材を使って町並み整備
 
56 筑豊通信 42 筑豊でも国は正義の顔して対処せよ 濱田イサオ
57 佐久間慎一郎の建築風景 嵯峨野鳥居本 佐久間慎一郎
58 仮設住宅改造計画 9 水害地仮設の改善工事は不十分、結露・漏水対策の案あり 五十嵐純一
60 住宅を読み解く 5 「木箱・西元町」葛西潔設計 鬼頭梓+
山下和正+
吉田研介+
渡辺武信
63 建築をあるく 22 沢田マンション 吉永健一
64 設計事務所ダイアリー 3 鮎川徹さんの一か月 環・設計工房一級建築士事務所
65 Focus
66 Forum 事業主は困惑、住宅の家賃に消費税導入を ほか 田中修一 ほか



東日本建築集

  黒川紀章建築都市設計事務所、中山克己建築設計事務所、GA設計



中部建築集
  S設計工房、蓮建築設計事務所



西日本建築集
  SADO一級建築士事務所、昭和設計、田渕建築設計事務所、ものづくり
  伊藤設計工房、島津建築設計事務所、総企画設計



HOME一覧前号